6/30 ヤマザキマリ『リ・アルティジャーニ-ルネサンス画家職人伝-』発売

2022年06月16日

ヤマザキマリさんの『リ・アルティジャーニ-ルネサンス画家職人伝-』6/30に新潮社より発売されます。

こちらは『プリニウス』のような合作ではありません(とりはストーリーにはかかわっていません)が、背景の考証と作画、全体の色彩設計をとり・みきが担当しております(※)。ルネサンス物なのにメディチ家も教皇もミケランジェロもラファエロも一切出てこない、フィレンツェで美術史を学んだヤマザキさん独自の視点の内容になっていると思います。ぜひ一家に一冊。

本邦ではオールカラーのマンガ単行本はなかなか実現するのがむずかしいのですが「とんぼの本」枠で出すことで「芸術新潮」連載時と同様に全ページカラーで収録することができました。ただ判型が違うので、単行本化に当たっては「とんぼの本」用に元原稿データをページごとに細かくレイアウトし直してあります。

連載中もつぶやきましたが「芸術新潮」で芸術史のマンガを描くというのは、担当した背景に限っても、本誌の想定読者を考えればどれだけプレッシャーであったか。美術史的観点はもちろん、当時の風俗習慣や建築や制作環境などの描写も、マンガ自体の絵の出来も、あらゆる専門家や好事家の眼に触れてチェックされてしまうのですから。ヤマザキさんにとっては専門分野ですが、私は全くの門外漢に近かったので毎回が格闘でした。

なお、キーポイントとなる既存作品の模写はほとんどをヤマザキマリさんが描いています(当然ですね)。折りしも山下達郎さんの新譜「Softly」のジャケットに採用されたヤマザキさん描く達郎さんの肖像画が話題ですが、 『リ・アルティジャーニ』ではその画風の源流であるアントネッロ・ダ・メッシーナが北方初期フランドル派の影響を受けるエピソードが描かれています。発売時期が重なったのは全くの偶然(のはず)。

※この作品は「芸術新潮」連載時には『プリニウス』同様、著作者が連名になっておりましたが、最終的にとりがストーリー内容にタッチすることはありませんでした。背景は描いていますが、通常の日本のマンガ作品の場合、背景担当者が著者名に名を連ねることはありません。ヤマザキさんからはありがたいお申し出がありましたが、私自身は著者名および著作者の権利からとりの名前は外していただくのが順当と判断し、こちらからの提案でこのような形になりました。なお背景担当というクレジットは本書に記載してもらっています。

6/30追記:電書版も同時に配信開始となりました。見てみましたが、最終的にデジタルデータの形で入稿されている本作品のカラー再現度のパフォーマンスは、紙より電書版のほうが凌駕してる部分が多いかもしれません(アラもバレますが)