リアド・サトゥフ×ヤマザキマリ対談

2019年10月16日

15日はアンスティチュ・フランセ東京のリアド・サトゥフ×ヤマザキマリ対談へ行ってまいりました。司会は明治大学国際日本学部教授の藤本由香里さん。

サトゥフさんの『未来のアラブ人』は深刻な状況を俯瞰的に見る距離感のとりかたが吾妻ひでおさんの近年の作品と共通してると思っていたら、サトゥフさんが『失踪日記』"Journal d'une disparition"をお好きだと聞いて納得。作家は「それがどのように起こったのか」は描くけれども、その評価に対しては読む人に判断をゆだねる、という方法は水木しげるや吾妻ひでおの作品に強い影響を受けた、と語ってらっしゃいました。

終了後、会食しながらの会話でサトゥフさんもSFファンであることが判明。ヤマトの主題歌も飛び出しました。フランスでは吾妻さんの過去作品はほとんど翻訳されていないので、吾妻さんも関係者も唸るほどのSFマニアであったことを伝えると、非常に納得したお顔をされていました。

さて『未来のアラブ人』で描かれる国際間引越の多い彼の幼少期は、ヤマザキマリさんとご子息のデルス君の経験とも共通するものがあります。お二人はサトゥフさんの母国、シリアに住んだこともあり、同席したデルス君は「まさに自分の話として読んだ」といっていました。

経験だけではありません。実際に体験したトラブルをいったんギャグに昇華して読者に読ませるというスタイルも、サトゥフさんとヤマザキさんはよく似ています。

もう1つのヤマザキエッセイマンガとの共通項は、大上段に振りかぶるのでなく極めてプライベートな家族の物語を描くことで違う国の事情や文化や問題を読者が知る、という点にあります。アラブ世界(と一口に言っても多様ですが)の常識やメンタリティは僕も理解が浅いですが、読んでいくと少しだけわかってくる。

ちなみに『未来のアラブ人』にはこういう場面も。カダフィ政権下のリビアで『スペクトルマン』が放映されていたとは知りませんでした。

最後に、やや遠近法がおかしい3ショット。